おもむろに研究 そこはかとなく描く

Morning Light

Nikomat EL, Ai Nikkor 50mm F1.4S
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東の空が白み始めた頃、あなたは助手席で少し動き始めた。
寝ていた所を連れ出したからあなたは良く訳が分かっていないまま助手席に座って寝ていたんだ。
僕は朝焼けの頃に海岸に間に合いたくて少し心配気にハンドルを握っていた。
パワーウィンドウの窓を開けた。
風がとても冷たかった。
少しだけ潮の香りが混ざっていたから、少し安心した。

朝焼けは僕らを待ってくれていた。

一番近い海岸の駐車場に車を止めただけの事。
二人とも土地勘がなかったからどこの海岸でも僕らには同じだった。
車を止めるとあなたは身支度を始めた。
あなたは僕が思っていたよりも素早く化粧を済ませた。
「化粧なんてお絵描きだよ」
いつもの台詞を口にしながら、いつも通り紅は引かなかった。

とても大ざっぱな感情の塊だけを覚えているんだ。
香った潮風と、目を射した光の量と、風の温度。
それら全ては僕の気分を転換することをせずに、むしろ僕の中の不安をとても大きく膨らませた。
風が冷たく気持ちよく、どうしようもなく所在なく不安だった。

あなたの楽しそうな顔を覚えている。
そして、いつも顔の隅に覗かせる空しさの欠片も覚えている。


実験室から出た。
夜11:30
風が冷たくなっていた。
あの日、あなたを連れ出しに行った風の匂いがした。
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by onwa-nukukazu | 2011-09-20 01:26 | friend