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おもむろに研究 そこはかとなく描く

Onwaの化学講座

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光化学反応系II (Photosystem II, PS-II)


雨の季節がやって来ますね。
空から水が降ってきます。
そして緑は勢いを付けて夏の陽差しを待つのです。

ということで、
「職場で自慢気に話してみよう、Onwaの化学講座」 (^ ^)



せっかく化学系の学生がやっているブログなので今夜は化学の話をしてみましょう。

みなさんは「光合成」という言葉を聞いた事はあるでしょうか?
テレビを見ているとたまに耳にする言葉です。
義務教育を完遂した方ならカクジツに理科の時間に聞いた事があるこの言葉ですが、
実は光合成って言うものは思っているよりも凄く素晴らしいものなのです。
シビレるくらい感動する自然界のエネルギー生産システムなのです。

最後はちゃんと水の話に帰着します。
脳みそを整理しながら「ほぉ〜。。。」って感じで読んでみて下さいね(^ ^)


上に示した絵は光合成を行っているタンパク質と呼ばれる塊です。(今日は写真じゃないよ)
絵をクリックして大きくしてみましょう。
この塊は緑色をした植物の中に必ず含まれています。
みなさんが今日食べた緑色野菜にも、必ず入っています。みなさん、生まれた頃からこれを食べています。
ちなみに栄養はありませんよ。

ところでタンパク質って何だろう?
タンパク質と呼ばれるものは毛糸で編まれたセーターのようなものです。
分子レベルの細い一本の鎖が複雑に絡み合って出来ています。
ちょ〜眼がいい人なら上の写真が一本の鎖で出来上がっているのが分かるかも知れませんね。
でもマグレで絡み合っているのではありません。これが自然界の実力なのです。
植物は絶対に正確に鎖を組み上げます。
人類の科学技術はこのレベルに到底追いついていません。

実はタンパク質は地球上にありふれています。
私達の体が機能するのもこのタンパク質があるお陰です。
DNAはこれらのタンパク質を正確に再現するための設計図であり、
そんなタンパク質の一種が上の絵なのです。

上の絵のタンパク質は植物の「光合成」を行っています。
言わば植物の生命を維持するための心臓です。
私達の体は心臓が血液を送り出し生命活動を維持しますが、
植物はこの「光合成」がエネルギーを作るんです。

じゃ「光合成」とは何でしょうか。

植物が光を浴びて何かする事。。。
もしくは賢い中学生ならこう言うかもしません。
植物が光を浴びて酸素を出す事。

「光合成」と「酸素」のペアには聞き覚えが在るかも知れません。
そしてこれらは正しい理解です。
光合成の過程では確かに酸素が作られます。
でも何故この「光を浴びて酸素が作られる」ことが植物のエネルギーになるのでしょうか。

僕は中学生の頃に先生に聞きました。
「酸素は植物も呼吸で使います。
植物は何故自分で使って余るほどの酸素を光合成をして出すんですか?」

「温和、それは大学に行ったらわかる。」 by 冷や汗をかく理科の先生

今となったら僕が先生に教えてあげようと思います。
「光合成は酸素を作りたい為に行うものじゃありません。
"植物が水(H2O)から電子を抜き出したい為に行うものです"
"酸素はその過程で出てくるカスです"
"植物にとっては要らないものです"
そして、私達はそのカスで呼吸して生きる事が出来るんです。」


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この絵は一枚目の絵の重要な部分を抜き出したものです。
一般に反応中心と呼ばれています。
この分子の構造は世界中にありふれているものでありながら、神秘です。
人類の科学が進歩し、学べば学ぶほど自然は神秘的な世界を見せてくれます。
この分子の並びは完璧に設計された美しい構造をしています。
何かが無くてもダメ。何かが足されてもダメ。
完成された絵画を見ているようです。

この部分で光合成の一番大切なイベントが展開します。
それが光励起による電荷分離状態の生成と、その酸化力を用いた水の酸化です。
うむ、意味不明だ。

植物が最終的に必要なものはエネルギーです。そのエネルギーで生きていく事が出来ます。
ここで言う"エネルギー"とは「電子を抜き出す事」と言っておきましょう。
取り敢えず、植物は生きていくためにどこからか電子を引き抜いて来る必要があるのです。
人間は歩けるので糖分を探す事が出来ます。そこからエネルギーを得ます。
でも植物は動けないので「そこにあるもの」からエネルギーを作り出す必要があります。
実は元を正せば植物も動物もエネルギーを作り出すのに必要な事は「電子を引き抜く」ことなのですが、
植物の選んだ道は「水」と「光」を使う事だったのです。

絵の中央にスペシャルペア(special pair)と呼ばれる部分が在ります。
ここに光が当たると光合成のスイッチが入ります。
そして左下のモコモコのマンガンクラスター(manganese cluster)で水が分解され、
電子が取り出されるのです。

あ〜、美しい。

自然界は世界に最も溢れている「水」を電子(エネルギー)の源に選びました。
そして無尽蔵に降り注ぐ光をその駆動力に選びました。
そこから取り出される電子と水素イオンは世界で最も簡単な原子の組み合わせです。
109種類ある元素の中で、生命を根幹で支えてくれているのは原子番号1の水素(水素イオン)です。
これは植物に限らず動物の体を見ても同じです。
体の至る所の機能で水素は必要不可欠な働きをしているのです。




今年も命の雨が降ります。
雨は森で分解され、電子を取り出され、植物たちを活かします。
そして植物たちは必至で生きて、その傍らで酸素を出します。あくまでゴミとして。
植物は育ち、栄養としても私達に命を与えます。
私達の住む地球が水で溢れている理由が分かる気がしますね。
太陽が生命の駆動力である事がヒシヒシと伝わります。
ヒトを含む動物はそのような"用意された"場所で生きているんです。


次からみなさんの雨の日が少しでも楽しくなる事を願いつつ(^ ^)



最後まで呼んで下さった方、ありがとう御座います!!
by onwa-nukukazu | 2010-06-20 03:20 | chemistry